FC東京加入が内定した松木玖生とご両親 [写真]=川端暁彦
12日午前、青森山田高校において同校サッカー部主将の松木玖生とFC東京は仮契約にサイン。松木のFC東京への来季加入内定が決まった。急転直下、驚きをもって迎えられる決定となった。
「ビックリする人が多いかもしれないね」と青森山田・黒田剛監督が語ったように、松木の進路として有力視されていたのは「欧州」だった。今年1月、そして夏前にも実際に現地へ飛んでドイツやフランスのクラブに練習参加を実施している。中には「すぐにでも」という声もあり、卒業後に関しても、Jクラブが出せるより良い金銭的な条件を提示してきたクラブもあった。
ただ、その中であらためて松木本人は関係者を交えて熟慮を重ねた。欧州行きには当然リスクも伴うし、実際に練習に参加した肌感覚もあり、「日本のJリーグでしっかりベースを作ってから羽ばたくのがいいと思った」と決断。高卒即欧州行きではなく、まずJリーグ入りを目指す方向に切り替えた。
とはいえ、松木の欧州志向はJクラブのスカウト陣にも広く知られているところで、すでに他の選手へターゲットを切り替えるなど、松木に興味を持っていたクラブでも一度撤退の判断を下しているところが多かった。このため、黒田監督は、かねてよりの関係性があり、「もし欧州に行かないならと言ってくれていた」というFC東京にまず連絡を取って、獲得の意思を変わらず持っているのかを確認すると、すぐに公式オファーを出すという返答があり、松木もこれを快諾。FC東京のクラブ関係者も驚くほどスピーディーに話はまとまった。
加入内定発表の記者会見に臨んだFC東京の石井豊スカウト部長は松木についてこう期待を語る。
「数多くの試合をスカウティングさせていただき、プロで十分通用する実力を備えていると感じている。高校1年生からずっと観てきて、プレミアリーグでわれわれのU-18チームと一緒のリーグで戦っていることもあり、常に情報を入れてきました。ボランチながら得点力があり、その上で守備の貢献度も高い選手だと評価しています」
一方、黒田監督が高く評価するのはその特異なメンタリティの部分だ。
「肝が据わっているし、何でも先頭を切って行動を起こす。発言するときも堂々としている。そのたたずまい、行動・思考というところに近年なかなかこういうタイプの選手がいない中で、小学校を卒業したばかりの段階で初めて観たときから大物になる気配がありました。サッカーのスキルはまたこれとは別の部分ですが、本人の努力もあるし、何より人のものを吸収しよう。人の話を聞こうという誠実な態度があって大きく成長した。プロの舞台でも、1年目だろうとふてぶてしく堂々とやってくれることを期待している」
そして松木本人は、FC東京を選んだ理由として、「ボランチに強度・展開力が求められるため、自分に合うのではないかと思った」という点に加え、日本代表DF長友佑都の存在も大きかったことを認めた上で、こう語る。
「長友選手は海外でもいろいろな国で挑戦していて、海外向けのメンタリティもそうですし、ピッチ外のところでも凄く努力されている選手だと思うので、いろいろな部分を真似していきたい」
高卒即欧州行きを断念したとはいえ、欧州でプレーする夢を捨てたわけではない。長友のような先輩に学びつつ、「まずはFC東京のリーグ優勝」(松木)を達成し、その上で欧州へ殴り込む腹づもりだ。石井スカウト部長も「われわれのクラブも世界に羽ばたく選手の育成というヴィジョンを掲げているので本人の夢を一緒に実現できれば」とサポートを約束しつつ、まずは「その力を味の素スタジアムで発揮していただければ」と期待を込める。
もちろんJ1のステージが甘い舞台でないことは百も承知。「すべてにおいてレベルアップしないと通用しない」と謙虚に語りつつ、それでも「やれる自信はある」とも断言する。青森山田の闘将は、遠慮することも臆することもなく、プロの大舞台にチャレンジしていく決意を固めている。
FC東京関係者が「ビックリした」といった言葉で口を揃えるように、事態が動き出してから決まるまでのスピード感は少々異例ですらあった。
取材・文=川端暁彦
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