【神戸経済ニュース】神戸市長田区や兵庫区を中心とする中小製造業の「町工場」を公開して地域の産業活性化をめざす「開工（かいこう）神戸〜神戸オープンファクトリー〜」では、普段は個人の訪問を受け付けない製造スペースの見学を受け付けた。記念の式典を開催した新長田駅前から、開工神戸の専用バスが巡回しており、歩くと少し時間がかかる「神戸市ものづくり工場」（神戸市兵庫区）でもバスなら20分弱。便利に見て回ることができた。
神戸マット工房
神戸マット工房 自動車のフロアマットを個人向けに受注生産する。新車を購入する際に純正品を買ってしまいがちだが、純正品にないオリジナルの柄が多数。神戸タータンのフロアマット（写真右）も特注品として製造する。このほか刺繍（ししゅう）入りのマット（写真左）や、気に入っていたじゅうたんを自動車のフロアマットに作り替えるといった個別の依頼にも対応できるのは「小回りが効く小規模な工場ならでは」（阪本宏美代表）。主要な顧客は個人で、ネットを通じて販売する。
中谷加工所
中谷加工所 スニーカーを製造販売する。大手スポーツシューズメーカー向けに靴のゴム底を卸売りしたり、海外製シューズの修理を受託したりといった事業展開を経て、2020年に自社ブランドのスニーカー（写真）を発売した。裁断、ほう製、靴底加工から成形まで一貫して社内で製造できるのが特徴だ。開工神戸では、実際の靴と同じ作り方でミニチュアの靴を作る体験会を開催。子どもづれなどでにぎわっていた。
神戸市ものづくり工場
神戸市ものづくり工場 神戸マット工房や中谷加工所が入居する「神戸市ものづくり工場」は、中小・小規模の製造業が入居する工場向けの賃貸スペースだ。阪神淡路大震災で被災した中小企業を支援する賃貸工場として建設された。200を超す賃貸スペースは現在、満室になっている。三相200ボルトの電気が使えたり、共用の会議室が使えたりと設備が整っており、起業間もない製造業の利用も増えつつある。開工神戸には入居企業７社が参加した。
金川刺繍
金川刺繍 主要顧客はアパレルメーカー各社だが、一般向けにワッペンの製造やネーム入れなど、さまざまな製品への刺繍も請け負う。針が通るものには基本的には刺繍できるという。図案をコンピューターに読み込んで刺繍機で自動的に刺していく（写真左）が、針と糸を通す向きや回数などの設計は金川誠司社長の腕の見せ所だ。刺繍機が動き始めてから徐々に刺繍ができあがっていくと、図案の再現度の高さに見学者らの驚きの声が上がった。
宮原ゴム工業
宮原ゴム工業 産業用ゴムスポンジシートを製造する素材メーカー。ゴムの中にたくさんの気泡がある、軽くて軟らかい素材を作る。気泡は１つずつが独立しているので、軽量化しながら水や空気を通さないゴムの性質が生かせる。パッキンやガスケットを作る部品メーカー向けの素材（写真左）として出荷する、完全ＢtoＢの工場だ。意外に手作業も残る製品の成形作業（写真右）では、職人の動きの素早さが、ひときわ目立っていた。
旭屋ガラス店
旭屋ガラス店 昭和時代に多く生産され、ガラス障子などに使われた模様入りの国産板ガラスを皿や小物、ランプシェード（写真右）などに作りかえる工房だ。以前は近隣住民を主要な顧客として、建具に使うガラスなどを販売する「街のガラス屋さん」だった。だが保存してあった割れ替え用のガラスをガラス工芸に使ったところ、レトロな雰囲気がおしゃれと人気に火が付いた。開工神戸には13日だけ参加する予定だったのが、12日にも多くの人が集まってしまったという人気ぶりだった。
熾り（神戸ザック）
熾り（いこり、神戸ザック） 国内でも数件とされる、職人の手作りでリュックサックを製造する。特殊な環境に耐えられるなど、登山家からの評価も高い。後継者難が心配されていたが2020年に、神戸市産業振興財団による後継者探し支援によって現在の経営者への事業承継が決まった。承継後、技術伝承などを目的として新たに作ったアトリエの１階が小売りスペース（写真）だ。今春に営業再開を予定する神戸ポートタワーでも販売も始める。
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