航空機のジェットエンジンを構成する羽状の構造物である「タービンブレード」。薄い羽が何百枚と並んでおり、ジェット燃料を燃焼した後に発生する高温高圧のガスのエネルギーを回転軸に伝え、推進力を得る。エンジンでも最も負荷がかかる場所だ。そんな中、日本航空(JAL)はクレスコと共同で人工知能(AI)による画像認識技術などでエンジン内部を検査するツールの開発を始めた。実現すれば不具合発生の予測に貢献する。
整備士がブレードを検査する際、現在は工業用の内視鏡を用いて内部を見るのが一般的だという。しかし、数百枚あるブレードの1枚ずつの故障リスクを見分けるのは難しく、長年の経験や勘、技術などが求められる。このため、整備士の作業量の平準化や今後の人手不足に備えた技能承継のあり方からも、改善する必要があった。
JALとクレスコは、以前からJALのオープンイノベーションの活動拠点である「JALイノベーションラボ」を通じて交流し、ここを起点に協業を模索。クレスコが眼科領域で培った画像認識AI技術や機械学習の知見を応用し、より精密な内視鏡の検査のほか、ブレードの故障予測や損傷の自動認識、技能承継などを実現する。
そのためには実機データの大量の蓄積が必要だ。当面の対象となるのは欧エアバスの最新鋭機「A350―900型」16機で、エンジン内部を内視鏡によって観察し、ブレードの画像データを継続して取得。これらの検査記録を「蓄積して時系列化してデータをためていく」(JALエンジニアリング)。併せて日々の運航の中で収集するエンジンのデータと融合させることにより、故障や不具合につながるような傷のパターンなどを学習していく。
A350はJALのフラッグシップ機であり、国際線の1000型機を含む最大で56機(うちオプション25機)の導入を計画している。長期にわたって運航することから、検査ツールを開発すればそれだけ効果も長く得られることになる。また、「新しい機材のほうが劣化傾向が時系列で把握できる」(同)メリットもある。
検査ツールの実用化は2025年度以降を視野に入れる。故障の予測技術を確立すれば、あらかじめブレードを整備する「予測整備」につなげることもできる。空の安全性向上に役立つと期待される。
また、ベテランの持つ知見や内視鏡の高度な操作技術を若手に継承する際の助けにもなるとみている。(編集委員・小川淳)
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