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Thursday, May 25, 2023

広大な扇状地に恩恵 文化や産業支えた水資源 - 読売新聞オンライン

takmaulaha.blogspot.com

 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界ジオパークに認定された白山手取川ジオパークは、手取川の急流がつくりだした雄大な景観が特徴だ。扇状地として開けた平野部では、人々が自然と共生しながら文化や産業を発展させてきた。

 今月20、21日、白山市の美川地域で藤塚神社の春季祭礼「おかえり祭り」が行われた。若者たちが吹くラッパの音が響く中、住民らは10台あまりの 台車だいぐるま と呼ばれる巨大な山車などを引きながら町内を練り歩いた。

 目を引くのは台車の豪華 絢爛けんらん さだ。漆塗りの車体に、 蒔絵まきえ などきらびやかな装飾が施されている。祭りが現在の姿となったのは江戸時代。当時の美川地域の豊かな経済力をうかがわせる。

 発展の背景には、江戸から明治期にかけて国内の物流を支えた北前船の存在がある。手取川の河口部は広く、美川地域は多数の船が訪れる一大寄港地になった。豊富で質の良い伏流水は飲料水に活用され、海上生活が長い船乗りが重宝した。

 藤塚神社の藤基辰正宮司(59)は「祭りには、手取川の恩恵を受けて繁栄した当時のなごりがある。町の誇りです」と胸を張る。

 広大な扇状地は、現代でも産業や生活を支える重要な基盤となっている。

 県によると、手取川扇状地で利用された地下水の量は、2021年度の推計で計約1億297万立方メートル。工業用が約5割を占め、水道用、農業用と続く。工業では、大量の地下水が必要な半導体や繊維産業で活用されているほか、河口部の湧き水は地域の住民の生活用水としても利用される。

 だが、地域の発展を支えてきた地下水も、無尽蔵ではない。15年、地下水位が急激に低下し、一部の湧き水が一時止まってしまうことがあった。国土交通省北陸地方整備局によると、低下の理由は、手取川上流で発生した地滑りや、地下水の使用量の増加などが考えられているが、詳しい原因はわかっていない。

 将来的な水量の減少も懸念されている。県立大の滝本裕士教授(環境利水学)は「地下水にとって、水田はダムの役割を果たしている」と指摘する。宅地化が進んで水田の面積が減ると、地中にしみこんで伏流水となる水の量が減少し、大雨の際に洪水が発生するリスクも高まるという。

 市は20年、NTTドコモや金沢工業大と連携し、市内5か所の井戸などにセンサーを設置。水位や温度などのデータを収集し、ホームページで公開している。市の担当者は「住民が水資源に興味を持つきっかけになれば」と話す。

 水の循環を表す「水の旅」が構成テーマの一つとなっている白山手取川ジオパーク。地域に豊かさをもたらしてきた水資源を、いかにして次代につないでいくかがカギを握っている。

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