《1994年、雑誌連載を皮切りに「女優」シリーズを開始。連載初回では、東京大学駒場キャンパスの900番教室でマリリン・モンローに扮するパフォーマンスをした。そこはかつて、三島由紀夫が東大全共闘の学生らを相手に討論を繰り広げた場所だった》
東大の小林康夫教授の授業で、学生には予告せず突然ゲリラ的にやりました。学生たちの反応もわからないし、工業用扇風機で作ったスカートがまくれ上がる装置も首尾よく作動するかわからない。危うい崖っぷちの場面でした。
あの時のマリリン・モンローは反転した三島由紀夫だったんです。アメリカという、いわば「男」に殺された女優と、「女」としての日本に殺された三島。2人はそんな反転した状態で背中合わせになっている双子です。
美術家の森村泰昌さんが半生を振り返る連載「ひとり遊びが芸術になるとき」（全４回）の最終回です。
あの時のマリリン・モンローって武装しないで戦う戦士だった。パンツを脱ぐシーンがありましたしね。男にならなければ、三島は生き延びえたのかもしれません。生き延びるための三島というイメージを思い描きながら、僕の場合は「女優」として900番教室に行きました。
ずっと痛みが伴うテーマを追いかけているような気がします。三島は切腹。ゴッホは耳を切った。西洋画の題材によくなるユーディットは男の首を切り落とす。右足を切断したメキシコの画家、フリーダ・カーロ。ゴッホと三島とマリリンは僕の中では確実につながっているんです。
《女優のイングリッド・バーグマンに扮した作品では、航空自衛隊の岐阜基地でロケをした》
飛行機や軍用車両も自由に使…
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