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Thursday, January 26, 2023

レベル4飛行で日本のドローン産業も海外と足並み揃うか?世界の ... - ドローンジャーナル

takmaulaha.blogspot.com

 昨年12月から始まったレベル4飛行を実現する新たな制度は、欧米に先駆けた世界で最も先進的な制度と言われています。

 全世界のドローンの飛行形態の実態は世界で初めて2020年に42か国、337組織を対象にアンケート調査が行われました(2020/12/31発表 Blyenburg & Co, Paris France)。その時点での集計では飛行形態の約50%が目視内飛行であるが、1~2年以内にはその割合は約30%に減少し、過半数以上が目視外飛行になるであろうとの予測が集約されています。目視外飛行はホビー用ではなく専ら産業用に使われますので、世界的に産業用には目視外飛行の利用が進んでいることが判ります。

 このように市場の実態はすでに目視外飛行への移行を加速しているわけですが、法整備が追いつかず海外では個別の申請を受けて許可する、個別認可により対応しているというのが実態です。

 欧州のEC委員会は2022年末に「欧州ドローン戦略2.0」(A Drone Strategy 2.0 for a Smart and Sustainable Unmanned Aircraft Eco-System in Europe 29.11.2022)を発表しましたが、ここには2014年から始まった第一次ドローン戦略が一段落し、ドローンの高度な飛行や空飛ぶクルマの制度整備を含め2030年までに達成すべき第二次戦略が提唱されています。ドローンに関しては目視外飛行などの法整備が最重要政策のひとつと指摘されています。

 米国においては、法規制委員会(Advisory and Rulemaking Committees―ARC)が2021年から目視外飛行に関する議論を開始していますが、まだ結論には達しておらず個別認可の状態が続いています。目視外飛行には現状の国家資格とは別の資格が必要との意見も最近出されています。

 従って日本のレベル4が先進的であり、制度のイノベーションが世界で最も早く実現されたことが判ります。これを契機に新しい時代に入った日本のドローン産業が今後どのようになるか考察してみようと思います。

海外ではサービス化も?目視外飛行によるドローン物流

 民間航空機の世界で、目視外飛行という概念はこれまで全くありませんでした。馴染みのある計器飛行(IFR)と有視界飛行(VFR)は、基本的にはパイロットが肉眼で確認し、安全を確保するというもので、この原則はこれまでのドローンにおいても目視内飛行(VLOS)の原則として世界が取り入れてきました。目視とは肉眼で見ることを意味し、ビデオや双眼鏡などの使用は認められておりません。目視内飛行は操縦者の肉眼による安全確保が原則となっており、第一次欧州ドローン戦略の集約を最初に発表した2015年のリーガ宣言においてもドローン飛行の責任は操縦者が負うべきであるとうたわれています(The RPAS Conference: Framing the Future of Aviation Riga, 5-6 March)。

 しかし、目視外飛行ではこの原則はもはや成り立ちません。代わって安全に対する責任は操縦者だけではなく、機体、機体運行管理者、そしてこれを支えるシステムが一体となって分担しなければならないという事になるわけで、レベル4ではこの原則に従って操縦者資格、機体の安全認証、安全な運行管理の策定などが法的に求められることとなっているのです。従来の目視内飛行の時代とは異なるパラダイムの到来です。

「リーガルイノベーションがあればテクニカルイノベーションがあり、そのまた逆も真なり」のことわざどおりであれば、今後のドローン産業界の最も大きな変化は技術の進化であろうと推測されますが、これを念頭に本稿では以下の5テーマに関し数回に分けて考察したいと思います。

① 新しいドローン利用分野の拡大(物流)
② 国家資格としての地位確立
③ 新しい専門職とその養成機関
④ DaaS(Drone As A Service)事業の拡大
⑤ プロフェッショナル用の高性能機体やシステム開発の加速

新しいドローン利用分野の拡大(物流)

 国土交通省は2015年の安倍首相による「ドローン物流の早期実現」の表明以来、物流の社会実装に向けて尽力し、2021年に物流ガイドラインVer.1(法令編)及びVer.2(社会実装編)を、2022年にはVer.3(事例集)を発表し、レベル3までの物流ガイドラインを整備し、レベル4に備える支援をしてきました。

 日本をはじめ欧州など10か国以上ではすでにさまざまな形でドローンによる配達事業が始まっており、中でも米国のドローン法(FCC Part107)では対価を得て他人の貨物を輸送することが認められておらず、別規制(Part135 チャーター航空便の事業規制)の適用によって事業認可を行っていることが特徴です。最初の認可を受けてウォルマートでは欧米における最大規模の事業展開を始めており、昨年末現在、全国23都市において34店舗から30分以内での配達サービスを開始していますが、今後全国400万家庭に拡大することとしています。この事業に使う機体開発を行ったWing社はすでに2か所に遠隔操縦室を設置し複数のドローンを操縦できる体制を整え、この計画に対応しています。

 ドローンの操縦はDroneUp社が一括で請け負っています。ウォルマートはオーストラリアにも展開することを発表しています。日本では安全な荷下ろし場所の確保が容易な山間部、過疎地などでの実施が先行しています。やがて目視外飛行による広域展開が期待されているところです。

▼ウォルマートが全国的なオンデマンドドローン配達プロバイダーであるDroneUp社に投資
https://corporate.walmart.com/newsroom/2021/06/17/walmart-invests-in-droneup-the-nationwide-on-demand-drone-delivery-provider

JpanDrone2022で伊藤忠商事が出展したドイツのVTOL機Wingcopter。

 輸送事業の採算性を上げるには出来るだけ多くの貨物を効率よく、少ない人件費で確実に運ぶための機体やシステムが必要で、欧米諸国では一回の飛行で複数箇所に配達できる機能を持ち、配達地点には着陸せず自動帰還できる貨物吊り下げ方式の機体が採用されています。Wing社の機体はその一つです。ドイツのWingcopterもこのように設計されています。

 VTOL型は高価格ですが、マルチコプター型に比べエネルギー消費が少ないため物流用機体には最も適する機体であると考えられており、今後大きな流れになるものと思われます。

 特定地点間での物資輸送には、ペイロードの小さい小型ドローンを使う配達事業とは異なり、ペイロードが大きく長距離飛行が可能な信頼性の高い機体が求められます。そのため、日本をはじめ欧州、米国、中国、台湾、イスラエルなどでペイロード50kgを超えるような大型ドローン開発が進められています。これについてはテーマ⑤(プロフェッショナル用の高性能機体やシステム開発の加速)にてもう少し検討します。

 欧州の規制では総重量600kgまでをドローンとして取り扱うこととしており、最近発表された欧州政府のドローン戦略では、大型ドローンを含め遠隔操縦する貨物輸送の時代が2030年までに実現することを想定しています(EUドローン戦略2.0)。

▼ドローン戦略2.0:欧州の大規模ドローン市場の創出
https://www.eeas.europa.eu/delegations/japan/drone-strategy-20-creating-large-scale-european-drone-market_en?s=169

国家資格としての地位確立

 現在、日本には300個を超える国家資格があるとされていますが、ドローン操縦資格もその仲間に加わることとなりました。最も期待される効果は、世間の認知がしっかり定着し、操縦者としての地位や評価が定まってくることでしょう。これまでは、業界に対してまとまった操縦者グループの意見などを反映する機会が少なかったのですが、今後は重要なステークホルダー(利害関係者)として、業界の発展に寄与できるようになります。

 産業用ドローンの操縦資格はすでに欧米では国家資格として先行しています。ただし日本の一等資格に該当するものはまだできていません。小型航空機の世界的な操縦者団体AOPAの先例に見る様に、資格を持つグループが国際的に連携すれば、今後の業界全体の発展に一層寄与できることになろうと思われます。こうなって初めて世界的に目視外飛行が社会に定着すると期待されるのではないでしょうか。

千田 泰弘

一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)副理事長
一般社団法人 JAC新鋭の匠 理事

1964年東京大学工学部電気工学科を卒業、同年国際電信電話株式会社(KDD)に入社。国際電話交換システム、データ交換システム等の研究開発に携わった後、ロンドン事務所長、テレハウスヨーロッパ社長、取締役を歴任、1996年株式会社オーネット代表取締役に就任。その後、2000年にNASDA(現JAXA)宇宙用部品技術委員会委員、2012年一般社団法人国家ビジョン研究会理事、2013年一般社団法人JAC新鋭の匠理事、2014年一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)副理事長に就任、現在に至る。

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