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Saturday, September 17, 2022

産業用「大麻」が地球を助ける、5つの驚くべき利用法 - ナショナル ジオグラフィック日本版

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米コロラド州のCBDオイル・ヘンプ・マリファナ農場で栽培されている大麻草。(PHOTOGRAPH BY JEREMY POLAND, GETTY IMAGES)

米コロラド州のCBDオイル・ヘンプ・マリファナ農場で栽培されている大麻草。(PHOTOGRAPH BY JEREMY POLAND, GETTY IMAGES)

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 産業用大麻「ヘンプ」は、すでに医学の分野では高い利用価値が認められている。ヘンプは植物としては「マリファナ」と同じ大麻(Cannabis sativa)という種だが、幻覚作用や依存性をもつ成分をほぼ含まず、米国ではその成分の含有率により両者ははっきりと区別されている。一方で、ヘンプには「カンナビジオール」(CBD)という成分が含まれる。CBDは脳の神経系の働きを調整し、不安や不眠症、炎症の治療に使われることも多い。研究では、てんかん、慢性痛、依存症の軽減にも役立つことが示されている。

 しかし近年、ヘンプの用途は医学の領域を超えて広がり、レーシングカーの製造、より持続可能なビールの醸造、食品のタンパク質の強化などにも使われ始めている。ここでは産業用大麻の驚くべき利用法を5つ紹介しよう。

1. 抗菌作用

 CBDは特定の種類の細菌(バクテリア)を極めて効率的に殺菌できることが、オーストラリアの研究者によって発見され、2021年1月に学術誌「Communications Biology」に発表された。大麻の有効成分が、新たな抗生物質の候補になったのだ。CBDは喘息(ぜんそく)や痛みに対してはすでに使われている。(参考記事:「米国〈医療マリファナ〉本当の話」

2. 自動車の軽量化

 ヘンプの繊維は丈夫で軽く、弾力性があり、微生物によって分解される(生分解性)ため、プラスチックの優れた代替素材になる。電気自動車(EV)の内装や車体の複合材料に使われる例も増えている。EVのバッテリーは数百キログラムもあり、これが車体重量を増し、エネルギー効率を低下させることから、車体を軽量化する必要があるためだ。2019年にはポルシェ社が、車体にヘンプの繊維からできた部品を使ったレーシングカーを作った。収穫したヘンプから取れる油もバイオディーゼル燃料の原料になる。

3. 綿より高効率な繊維植物

 ヘンプは気候変動に強い。水の使用量に対する生産性は綿の5.2倍であることを、ドイツ、ライプニッツ農業工学・生物経済研究所の研究者らが発見し、2020年10月に学術誌「Water」に発表した。

 また、米レンセラー工科大学の研究者らが2020年5月に学術誌「Journal of Cleaner Production」に発表した論文によると、同じ面積あたりの繊維の生産量は綿の3倍にもなる。そのうえ、二酸化炭素の排出量は生産工程全体で見れば変わらない。

4. より持続可能なビールの原料

 スイス、チューリッヒ応用科学大学の研究者らは、ビールの原料に使われるホップの4分の3をヘンプの花で代用したラガービールを作り出した。正体を隠したブラインド・テイスティングでは100%ホップを使用したビールと区別がつかなかった。

 研究者らは、従来のビールよりはるかに持続可能性が高いと説明する。スイスでは、ヘンプの花は工業生産の過程で生じる廃棄物と考えられているからだ。しかし、ヘンプは丈夫な植物で、農薬や肥料をほとんど必要とせず、気候変動の影響により世界中で生じている暑さや不安定な気候をものともしない。味の面でも、ヘンプを使ったビールには何の欠点もないことがブラインド・テイスティングで示された。

5. タンパク源

 ヘンプの種子は牛肉と同じくらいタンパク質が豊富で、良質なアミノ酸、食物繊維、オメガ3脂肪酸も多く含まれる。一切の動物性食品をとらない完全菜食主義者(ビーガン)にとっては、貴重な代替食品となる。科学者らは、ヘンプを原料とする麺類、豆腐、さまざまな代用肉を開発している。

ギャラリー:マリファナの科学(写真クリックでギャラリーページへ)

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大麻は長らく有害とされてきたが、苦痛を軽減し、病気の治療にも役立つ大切な植物だと主張する人々がいる。上は、「ブルーベリー・チーズケーキ」という品種のつぼみ。樹脂の粉にまみれている。(Photograph by Lynn Johnson)

文=NATIONAL GEOGRAPHIC STAFF/訳=山内百合子

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