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Sunday, January 31, 2021

産業用ロボットを巡る 光と影(31) - オートメーション新聞ウェブ版

takmaulaha.blogspot.com

ロボットの「目」はカメラだけではない(下)

選択を間違えると、失敗の元

前回の記事では、ロボットの「目」は「カメラ」だけではなく、他に選択肢(レーザーセンサー、超音波センサー、接触センサーなど)があることを述べた。

今回は、ロボットの「目」にカメラが最適な用途、またロボットと「目」を組み合わせたロボットシステムの導入において、注意すべき点を述べる。

レーザーセンサー。隣はプラズマ切断のヘッド

カメラが最適な用途

ロボットの「目」にカメラが最適な場合がある。それは、「コンベアにのっている製品を次々とロボットでピッキングする」「バラ積みされている製品をロボットでピッキングする」などの場合である。

これらは、たとえ乱雑なズレがあっても、フレキシブルなハンド(吸着など)を使用すれば、現場で特に問題が無いため、高額なカメラを使用する必要がない。何より上記のシステムは、「ロボット」「カメラ」「解析ソフト」を1つのパーケージにして販売&サポートをしている優秀な企業が存在するので、そこに任せるのがよいだろう。

メーカーやSIerへの丸投げは失敗の元

問題はそれ以外の用途であるが、まず注意点を述べる。
 
「カメラ(センサー)メーカー、もしくはSIerに相談すれば、うまくいくのでは?」という安易な発想は最大の失敗の元である。なぜなら、カメラメーカーは、顧客にとってベストなロボットシステムを推奨するのではなく、自社が販売している高額なカメラ(やセンサー)が売れる方向に顧客を誘導する。SIerも同様で自社が得意としているロボットシステムに顧客を誘導する。つまり、顧客にとってベストではないロボットシステムを導入することになり、結局は手作業に逆戻りになってしまうパターンが日本では非常に多い。

特に日本では、有名なカメラ(センサー)メーカーやSIerは、大企業から降りそそぐ大量のお金に酔い、ロボットシステム発展への熱量を失い、あぐらをかいているので注意が必要だ。

実績とは「売上」ではなく「顧客の喜びの声」

話が少しそれてしまうが、筆者がこれらを厳しく指摘するわけは、彼らが「実績」と自賛しているのは、「売上」や「取引先」であり、「顧客の喜びの声」ではない。その証拠に、彼らに「実績は?」と聞いてみれば、「売上」と「取引先」を自賛するが、具体的な「顧客の喜びの声」は聞けないだろう。

「ではロボットシステムのコンサルタント会社に聞けばよいか?」というと、それも注意が必要だ。「ロボットシステムのコンサルタント会社」が日本にいくつかあるが、上記と同様で具体的な「顧客の喜びの声」を聞けないだろう。

コンサルとテストは重要

話を元に戻すと、ではどうすれば良いのかというと、実はシンプルで、「多くの顧客から評判の良い優秀なコンサルタントに知恵を借り、ロボットシステムの構想を助言してもらう(さらにチェック役もお願いする)」、そして、そのロボットシステムを発注前に必ず「テストをできるだけ現場に近い環境で行う(できるだけ、と記載したのは受注側からすると、受注前に完璧な環境を構築しテストすることは不可能なため)」の両方を行うことである。

「優秀なコンサルタント」であれば、多くの成功例・失敗例を全国の工場で見てきているため、最適なシステムを提案してくれる。しかも、カメラ(やセンサー)メーカーやSIerが身勝手な納品をしたときに、素人だと「見た目が立派なロボットシステム」に善悪を判断できずに検収してしまうところ、後で問題が起きないように厳しいチェックも行ってくれる。

ロボットメーカーの選択も間違えると失敗する

最後に、「目(カメラ/センサー)」さえ正しく選択できれば、成功するわけではない。ロボットメーカーによって、向き/不向きがある。例えば、「目」によって取得したデータからロボットを動かしたい場合、そのデータや作業用途に合わせてロボットプログラムをカスタマイズしなくてはならない。その「カスタマイズ性(汎用性)」がロボットメーカーによって、「かなり大きな違い」があるため、このことも決して軽く見てはならない。これは非常に奥が深く、さまざまなロボットメーカーのプログラムにも精通していないと判断できず、「このロボットメーカーなら絶対に大丈夫」という単純なことでもない。

例えば、プログラムのカスタマイズ性(汎用性)があまり無いロボットメーカーであれば、できることに縛りがある(例えば、ロボットコントローラとパソコンとリアルタイムでデータの送受信ができない、もしくは文字列の操作ができない、等々)。しかし、その代わりプログラムが簡略で分かりやすいため、他社メーカーより開発しやすいだけでなく、ロボットプグラムに精通していない工場の現場作業者でも簡単に編集ができるという利点がある。

さて、もっと言いたいことはたくさんあるが、とてもこのコラムでまとめることができないので、ここまでとする。

「ロボットの目は何を選択すべきか」「目、以外の選択はどうするか」に関して、筆者でよければ、遠慮なく相談してほしい。

◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。47歳。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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