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Wednesday, March 4, 2020

ASMRやノイズで訴求…「音でブランディング」は花開くか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch

「THIS SOUNDS GOOD?」ではアーティストが日常のノイズを自ら選んで集音する

「競りの独特の言い回しに心地いいリズムがある。音を通して青森県の新しい魅力に出会ったよう」。青森県農林水産部総合販売戦略課に所属する松坂彩佳技師は手元に届いた音にそんな思いを抱いた。アーティストのナカコーさんが集音した青森県弘前市にある青果市場のノイズだ。青森県の農林水産業の魅力を伝える「音の資産」として、県内や東京都内のイベントで発信する準備を進めている。 音の制作を仕掛けたのは、博報堂グループで新規事業を手がけるquantum(クオンタム、東京都港区)と、声優などが読み上げた本の音声を楽しむオーディオブック事業のオトバンク(同文京区)が2019年3月に共同で設立したブランデッドオーディオレーベル「SOUNDS GOOD(サウンズグッド)」だ。東京ガスやJR東日本など企業やブランドが持つ“固有の音”を活用して企業と消費者をつなぐ「音のブランディング」を手がけており、行政は青森県が初の事例になった。 AI(人工知能)スピーカーの登場による音声コンテンツと人との接点の拡大などを背景に新しい音声メディアが台頭する兆しを見せている。オトバンクのオーディオブックサービスの会員は100万人を突破し、声のブログをコンセプトにした「voicy(ボイシ―)」も人気を博す。サウンズグッドはそうした接点で発信するブランディングコンテンツなどとしてのポジションを狙う。音声メディアの沸騰とともに音のブランディングは花開くか―。(取材・葭本隆太)   「企業が音でブランディングしたいと考える世界がくる」。18年春、クオンタムBiz Dev部門の安藤紘プロジェクトマネージャーは考えた。前年の末に上陸した米グーグルや米アマゾンのAIスピーカーが注目を集めており、「一家に一台所有する日が来るかもしれない。そうなれば一つのメディアになる」と見通したからだ。 音のブランディングをテーマに企画を練る中で出会ったのが「ASMR(※)音源」だ。脳や感情に働きかける気持ちいい音として注目を集めていた。そこで工場の製造ラインで発生する音や製品使用時の音など企業が持つ固有の音から抽出したASMR音源を作る方法を構想した。さらにそのASMR音源をアーティストが活用し、楽曲を制作する仕組みを設けることで、若年層に訴求力のあるブランディングができると考えた。このアイデアがレーベル「サウンズグッド」の原型になった。 従前から事業を支援していた東京ガスが最初の顧客となり、企画は動き出した。その事業支援で協力関係を構築しており、音の知見を豊富に持つオトバンクへの協力要請は必然だった。 「音を“ひらく”手法を発明する」。オトバンクの久保田裕也社長は18年始めに目標を掲げた。オーディオブック事業の成長には音声コンテンツ市場全体の盛り上がりが欠かせない。それにはオーディオブックではない、消費者の間で話題になって伝播しやすい音声コンテンツの仕掛けが必要だと考えていた。このため「音のブランディング」を掲げたクオンタムの協力要請を断る理由はなかった。 久保田社長は「(安藤さんのアイデアは)ASMRで訴求したり、アーティストが主体的に関わったりする企画のため(音声コンテンツ市場を盛り上げる手段になり)音が“ひらく”かもしれないと思った」と振り返る。 安藤さんを代表としてレーベル「サウンズグッド」を設立して約1年、東京ガスとは工業用バーナーの燃焼音から、JR東日本とは山手線大塚駅周辺の音からASMR音源を制作し、それを基にアーティストが楽曲を制作した。約100年続く老舗切削工具メーカーである彌満和(やまわ)製作所(東京都中央区)の初のブランディングなども手がけた。切削工具で金属にネジ穴を開ける音などを活用した。 クオンタムの安藤さんは「顧客企業にはラジオCMやイベントなど複数の場所で制作した音を利用してもらった。(一度きりの)コンテンツではなく、『音の資産』を作る取り組みと企業に認識されてきた。また、投資費用によって品質に差が出やすい映像に対し、音は企業の規模に関係なく平等に取り組める強みがあると感じた」と1年の手応えを強調する。 一方、企業の音は一般の消費者にとって遠い存在のため、音に興味を持ってもらう手段としてはハードルがあると感じていた。そこで聞き手の裾野を広げるため、誰もが聞き慣れた日常の音を面白がってもらう方法を考えた。アーティストが自らの視点で街のノイズを選んで集め、さらにそれを使って楽曲を制作する新たな仕組みを構想した。青森県から問い合わせが入った19年夏はちょうどその頃だった。 「若い世代にASMR動画が流行している。基幹産業である農林水産業のイメージ向上に『音』を活用できないか」。青森県がサウンズグッドに問い合わせた背景にはこうした期待があった。農林水産業就業者の確保などのため、青森県として10―20代の県外流出の抑制は喫緊の課題だ。その解決策として農林水産業の魅力を新たな手法で発信するプロジェクトに取り組んでおり、サウンズグッドに白羽の矢を立てた。 青森県の松坂技師は「東京ガスやJR東日本の事例をニュースで知り、これまで注目されていなかった『音』を価値化した独特な取り組みと思っていた。農林水産業の魅力を『音』で発信するアイデアを実現する上で相性がよいと感じて連絡した」と説明する。両社が情報交換する中で、アーティストが街の音を選び集めて、それを基に楽曲を制作するサウンズグッドの新たな仕組みの活用を青森県に提案し、実施が決まった。 青森県の音の資産は地元出身であるアーティストのナカコーさんが集音し、楽曲を制作した。弘前市の青果市場を舞台にした音などを集音した。集音した音やそれを基に制作した楽曲は、サウンズグッドが4月に東京都渋谷区で開催するイベントにおいて、渋谷のノイズやそれを活用した楽曲とともに展示するほか、県庁でも展示する予定だ。松坂技師は「(4月以降)県内外の移住促進や観光など、青森県のPRを行うイベントや企画で活用したい」と意気込む。 サウンズグッドは今後、企業が持つ固有の音からASMR音源を抽出する「サウンズグッド」を展開すると同時に、青森県で手がけた仕組みを「THIS SOUNDS GOOD?」として全国各地の行政などに提案していく。 オトバンクの久保田社長は「(AIスピーカーの登場といったデバイスの進化や音声メディアの台頭などを背景に)音のコンテンツは今後爆発的に増える。そうなったときに何を聞くか。いい音を聞くとそこからは離脱できない。(心地いい音を発信する)サウンズグッドの取り組みは2-3年後に真価が発揮される」と確信する。 すでにファンは生まれており、真価を発揮する下地ができつつあるようだ。青森県の松坂技師は「青森県のように全国各地にもその土地固有の文化や風習、産業があり、眠っている音の資源は豊富にある。ぜひ他の地域の音を聞いてみたい。(サウンズグッドの取り組みが)全国に広がれば、その土地を音やノイズで楽しむ新しい価値観も受け入れられるようになると思う。今後の展開が楽しみ」と期待する。            

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March 05, 2020 at 04:03AM
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