――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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米シェアオフィス大手ウィーワークの共同創業者アダム・ニューマン氏が引きずり下ろされたが、もう手遅れであり、これだけではどうにもならない。
ニューマン氏のおおらかな個性に後押しされ、同社は並外れた企業価値を持つまでに成長した。だが市場の力がある時点でそれを現実に引き戻すのは必然だった。
もし成長の途上でニューマン氏とソフトバンクグループ(SBG)があと半歩慎重であれば、今の状況は違っていたかもしれない。だが同氏の飽くなき野望は、ウィーワークを守りきれない状況にまで追い込んだ。たとえ同氏が采配を振るうことはなくても、その「遺産」を修正するのは容易ではない。
ニューマン氏はウィーワークの親会社ウィーカンパニーの最高経営責任者(CEO)を退いた。今週に入って筆頭株主のソフトバンクから辞任を求められていたとされる。ニューマン氏は非常勤会長職にとどまるが、会社の経営は新CEOに委ねられる。
新規株式公開(IPO)に乗り出すテクノロジー系の新興企業はウィーカンパニーだけではないが、企業統治(ガバナンス)に深刻な欠陥を抱えながら、未公開株に途方もない価値がついたという点では他に類を見ない。直近の資金調達ラウンドでは、評価額が470億ドル(約5兆円)を超え、オフィス転貸を本業とする企業としては非現実な水準に達していた。同様の共有オフィス賃貸事業を手掛ける「リージャス」を傘下に持つIWGの時価総額はおよそ45億ドル。ウィーワークの運営するオフィス528カ所に対し、リージャスは3000カ所以上あるにもかかわらず、ウィーには何倍もの価値がついていた。
また、ウィーの資本構造には特に懸念される要因がある。株式希薄化の恐れがある転換社債や、30億ドルの資本を調達した場合に限り実行するとの条件付きの信用枠などだ。さらに同社は年内に上場を果たす必要がある。さもなければ新興成長企業という立場を失い、IPO実施への道が一段と厳しくなりかねない。
こうした状況がCEO交代によって変わることはない。ニューマン氏の自己取引(IPO前に株式売却と借り入れを通じて7億ドル以上の現金を手にしたことなど)やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先週報じた個人的な振る舞いなどは、単なる添え物にすぎない。それらは同社が直面する他の根本的な問題から目をそらすだけのものになりつつある。実際、薬物使用の疑いが明らかになったのはIPOが延期された後であり、IPOが難航したのはそれが理由ではない。
ニューマン氏が過半数の議決権を手放す決意をしたのは重要なことだが、経営チームを全面的に刷新するには至らなかった。ウィーワークは依然、同氏が作り上げた会社であり、同氏が根づかせたビジネスモデルや文化も残っている。さらに言うと、新CEOが任命されても希薄化に直面する資本構造の解消にはならず、ソフトバンクをウィーの大幅な価値下落から救うこともできない。
ウィーが謙虚な姿勢で投資家の前に戻ってくるためには、もっと根本的な見直しが必要だろう。問題は、ウィーと最大出資者であるソフトバンクがそれほど長く待てるかどうかだ。
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2019-09-25 05:45:00Z
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