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Tuesday, July 4, 2023

核変換を利用した産業用加熱装置2030年以前に量産へ - ITpro

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 原子核変換に伴う熱の放出を利用する加熱装置の製品化が目前に迫っている。新エネルギー関連のベンチャー企業、クリーンプラネット(東京都千代田区)が量産を前提としたプロトタイプを製作し、現在、実証試験を続けている。2030年までには川崎市内にパイロットプラントを建設し、量産体制を整える計画だ。

 クリーンプラネットは2012年に設立され、2015年に東北大学と共同で仙台市内に設立した同大学電子光理学研究センター内「凝縮系核反応研究部門」と、川崎市にある製品開発拠点で、「量子水素エネルギー(Quantum Hydrogen Energy=QHe)」の実用化に取り組んでいる。

 「量子水素エネルギー(QHe)」とは、ナノサイズの構造を持つニッケルベースの複合金属材料に少量の水素を吸蔵させて加熱すると、投入した以上の熱を生み出せる技術で、クリーンプラネットが独自に使っている用語。同社では、「QHe イカロス(IKAROS)エンジニアリング・プロジェクト」として事業化を進めている。

 こうした現象は、研究者の間では「凝縮系核反応」「金属水素間新規熱反応」「低エネルギー核反応」などと呼ばれ、ここにきて各国で研究が活発化している(図1)。

図1●量子水素エネルギーを含む凝縮系核反応の原理イメージ

図1●量子水素エネルギーを含む凝縮系核反応の原理イメージ

(出所:NEDO)

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 エネルギーを生み出す原理は、日米欧など国際的な枠組みで進めている熱核融合実験炉「ITER(イーター)」と基本的に同じだ。水素原子の融合に伴う質量欠損により放出される膨大なエネルギーを熱交換器で熱として取り出す。

 ただ、熱核融合と量子水素エネルギーの反応系は異なっており、熱核融合では、水素と水素が融合してヘリウムになる反応を狙っているのに対し、量子水素エネルギーでは3つ以上の複数の水素原子が同時に関与する多体反応が主体と考えられており、反応による生成物は核種変換を経て、複数の元素が確認されている。

 現状のエネルギー密度は核融合の理論値より2桁下まで到達しており、水素燃焼による化学反応に比べれば1万倍という膨大なエネルギーを生み出しているという(図2)。

図2●量子水素エネルギー(QHe)とメタン・水素燃焼、核分裂、熱核融合のエネルギー密度の比較

図2●量子水素エネルギー(QHe)とメタン・水素燃焼、核分裂、熱核融合のエネルギー密度の比較

量子水素エネルギーは、化学反応の1万倍に達する(出所:クリーンプラネット)

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 何よりも熱核融合に比べた利点は、エンジニアリングの容易さだ。熱核融合では、1億℃ものプラズマ状態を磁気で閉じ込めたり、大出力レーザーの放射を用いたりするなど、大掛かりな設備が必要になるのに対し、量子水素エネルギーでは、金属のシートに水素を吸蔵させ一定の条件下で、数百℃程度の加熱で、水素原子の融合を誘発させる。

 産業分野では一般的な数百℃の加熱で済むため、ステンレスのような一般材で構成でき、熱核融合と違い反応時に中性子とガンマ線が放出されないため、コンパクト化して工場やビル、家庭でも導入できる可能性がある。

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