記者の目/ここに注目
□工場内のすべての仕事ができるように実務経験を積む
□職場の同僚の推薦を基に頑張った人を年間で表彰
ネオケミカルは化学品の蒸留を専門に受託するメーカー。グラム単位の少量蒸留や研究開発支援からパイロットスケールでのトライアル生産、数100㌧レベルの製品製造まで、顧客の要望に幅広く対応している。蒸留は工業的に最も多く用いられている精製技術の一つで、混合物を蒸発させることによって沸点の異なる物質を分離する手法を指す。同社は沸点が近く、分離困難な化合物の精製を得意としており、現在、電子材料向けの特殊グレード製品を中心に蒸留作業を請け負っている。
中平 貴年さん
1990年、石炭由来のクレゾールを蒸留し、塗料やレジスト向け材料を製造する会社としてスタートした。2006年に岡山工場（岡山市北区）が竣工。その後も生産設備の増設を進め、分離能力の高い蒸留塔のほか、熱によって重合や分解の恐れのある化合物を高真空の低温で蒸留する薄膜蒸留設備も整えた。また、製品の分析技術の向上や品質管理体制の整備にも力を入れる。
中平貴年社長は「電子材料向け製品は一般工業用の製品に比べて品質管理基準が厳しい。高い蒸留技術だけではなく、高度な分析技術や厳格な品質管理体制も兼ね備えていなければならない。そこは蒸留を専門に受託する会社の中でも抜きん出ている」と強調する。
人の手をかけた製品づくりを展開
大規模な蒸留塔は屋外にあり、当日の天候によって放熱条件などが変化するほか、原料組成によっても最適な蒸留のための条件設定は異なる。さまざまな要素に目を配り、状況を見極めた上で、蒸留温度を微妙に調整するなど、細部にまで人の手をかけて作業を行う。「オペレーターの能力で製品の品質にも大きく差が出る。経験とノウハウを持った技術者を育成するために働く環境を整え、定着率を高め、蒸留技術の継承にも努めている」（中平社長）
岡山工場は24時間の稼働体制を敷く。現在、18人のスタッフで4つのグループをつくり、1日3交代で運営している。18人という人数は、同規模の蒸留受託会社の工場に比べて3分の2程度である。スタッフはそれぞれに専門職や担当業務を持つが、蒸留塔の運転管理や製品の分析業務、出荷の際のフォークリフトの運転など、工場内の仕事はすべてこなせるように実務経験や自己研さんを積んでいる。これにより、作業の急な予定変更などが生じた場合にも、近くにいるスタッフがバックアップ要員としてサポートすることができ、生産活動を一時的に止める必要もないという。
前に進み続けられる人材求む
社内では年に2回、全従業員を対象に面談を行う。中平社長が聞き手となり、時間をかけて会社や職場への要望や不満にも耳を傾ける。また、岡山工場では職場で頑張っている人や見習いたいと思っている同僚を従業員が3人ずつ推薦し、多くの票を得た人を表彰する制度も毎年実施している。「それぞれの仕事のやり方や職場への貢献度など、私や工場長が見えていない部分もよく分かるので、多面的な評価につながっている。作業前に容器の洗浄を黙々とやっていたあるスタッフを複数の同僚が評価し、推薦したのを本人が知ったとき、『嬉しい』と涙を見せた姿は印象的だった」と中平社長は振り返る。
今後は蒸留工程の受託事業のほか、不純物などが多く、国産よりも品質の劣る輸入原材料をリファインするビジネスにも注力する。「今、自分たちが優位だと思っていることも、5年後には失われている可能性も高い。少しでも前に進まなければ、将来仕事はなくなる。人材も今がベストではなく、もっと良くならないかと考えられる人に来てほしい」と中平社長。常に前向きに仕事に向き合い、技術を磨き続けることができる「蒸留のスペシャリスト」をこれからも育てていくつもりだ。
理系出身の若手社員に聞く
提案や意見を聞いてもらいやすい職場環境
馬部 翔伍さん
（2016年入社）
大学、大学院では有機化学を専攻しました。会社説明会に参加して初めて蒸留を専門にする会社があることを知りましたが、学んだことを活かせると感じ、入社しました。現在は小さなスケールの設備で蒸留を行い、製品を分析して量産へとつなぐ仕事をしています。最適な分離条件を探すのは時間もかかりますが、うまくいったときにはやりがいを感じます。同僚は20代、30代が中心で年齢も近く、自分の提案や意見を聞いてもらいやすいのがこの職場のいいところです。
会社DATA
所在地 大阪市中央区平野町3-4-2
設立 1990年6月5日
代表者 代表取締役社長 中平 貴年
資本金 9450万円
従業員数 30人
事業内容 受託蒸留事業
URL https://www.neo-chem.com/
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