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Monday, October 24, 2022

上質石灰の火 絶やさぬ - 読売新聞オンライン

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 県内の伝統産業を支える優れた技術の継承者「土佐の匠」に今年度は4人が認定され、24日、高知市内で認定証交付式が行われた。1996年度の制度創設以来、33分野で計126人が認定される中、井上石灰工業(南国市稲生)の西川良さん(47)は石灰製造で初めての認定。時間と手間を惜しまない伝統的な製法「塩焼き法」を守ってきたことが評価された。(飯田拓)

 山の斜面に深く掘られたレンガ製の炉をのぞき込むと、吹き上げる熱風の奥に赤々とした炎が見える。西川さんはクレーンやスコップを使い、石炭燃料と石灰石、塩を手際良く投入していく。炉中の温度は1000度を超え、夏場は気温が50度近くまで上がる過酷な作業場だが、「小中高の野球部の練習では水も飲めなかった。当時に比べたらマシですよ」と笑う。

 県内に石灰作りが伝えられたのは1600年前後。当初は貝殻を焼いた「貝灰」だったが、地殻変動で太平洋から移動してきた良質な石灰石が多く分布し、原料に使われるように。農業用肥料としての需要が増えると、稲生も産地として発展。県としての生産量も全国上位になった。

 西川さんは稲生が地元。高校卒業後は高知と大阪を結ぶフェリー会社で操船を担当していたが、明石海峡大橋開通などで業績が悪化し倒産。井上石灰工業の求人を見て「工場の風景にはなじみがある」と2006年、この世界に飛び込んだ。

 一般的には大型の炉で重油を使い、数時間で焼き上げるが、同社では塩を入れながら3日間かけて仕上げる。塩が石灰石の収縮速度を遅らせ、長時間焼くことで不純物が飛び、高品質な石灰に仕上がるという。ただ天候や湿度などを見極め火の回り方や風の通り方を調整しないと生焼けや黒焦げになるため、毎日午前5時と10時、午後3時に様子を確認する必要がある。

 難易度と効率性から県内でも数社のみという製法だが、その品質は食品や医療などの業界でも重宝され、コンビニ店のおでんのこんにゃくは、同社の石灰で固めたものも多いという。

 先輩からは「稲生の地から窯の火を消すことのないように頑張れ」と託されている。西川さんは「これを機に若い人が石灰作りに興味を持ってくれたらうれしい。引き継いできた技術を今後も守っていく」と決意を新たにした。

 他の認定者は次の皆さん。

 梅原朗(菓子製造)▽松本昇吾(日本料理)▽横山信介(造園)

 11月10~12日、高知ぢばさんセンター(高知市布師田)で開かれる「第11回ものづくり総合技術展」で、認定者の作品が展示される。

<石灰> 太古に海底のサンゴなどが固まった石灰石が原料で、高温で焼くことで不純物を飛ばして製造する。セメントなどの工業用や学校のチョークなどのイメージが強いが、こんにゃくやしらたきの凝固剤、錠剤の表面コーティングなどにも幅広く使われている。

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