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Thursday, June 2, 2022

工業用水道廃止で無料の江東区営釣り場閉鎖へ 上水道使用すると運営費7倍 苦渋の決断 思い釣り合わず…:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

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豊住魚釣場でヘラブナを釣り上げ、笑顔の男性=いずれも江東区で

豊住魚釣場でヘラブナを釣り上げ、笑顔の男性=いずれも江東区で

 江東区に二カ所ある無料の区営釣り場が今年いっぱいで四十余年の歴史に幕を閉じる。利用していた工業用水道の供給廃止や施設の老朽化が主な理由だが、釣り好きの区民たちにとっては憩いの場で、閉鎖を惜しむ声が上がっている。

 「考え直してよ」「なくさないで」。五月二十八日、区役所であった釣り場閉鎖の説明会では、参加者から継続を望む意見が相次いだ。区側は「財政的に、閉鎖はやむを得ない」と説明した。

 釣り場は区営砂町魚釣場(うおつりば)(南砂)と区営豊住魚釣場(千石)。砂町は長さ八十メートル、幅二十五メートル、深さ二メートル。豊住は長さ五十メートル、幅十六メートル、深さ二メートル。それぞれヘラブナとコイが放され、釣れた魚は再放流する「キャッチアンドリリース」方式。釣り具や餌を持ち込めば、誰でも無料で釣りが楽しめる。

 二つの釣り場の運営に欠かせなかったのは料金の安い工業用水道だ。その供給を、東京都は来年三月末で止める。上水道に替えると、釣り場の運営費が七倍に跳ね上がると見込まれ、閉鎖の大きな要因となった。

 都の工業用水道は、地下水のくみ上げに伴う地盤沈下を防ぐ目的で一九六四年に供給が始まった。昭和五十年代以降に地盤沈下はほぼ落ち着き、目的を果たした一方で、工場の郊外移転などで需要が減少。料金収入が落ち込む中、排水管など設備が古くなったこともあり、二〇一八年の都議会で工業用水道の廃止が決まった。

砂町魚釣場でヘラブナを持ち上げる男性

砂町魚釣場でヘラブナを持ち上げる男性

 区は、一八年度の使用実績をもとに釣り場の年間の水道料金を試算。工業用水道から上水道に切り替えると、両釣り場を合わせた水道料金が約八百万円から約五千七百万円に上がる。いずれもオープンから四十年以上がたち、陥没や漏水などの改修にも多くの費用がかかるという。

 釣り場の利用者数が減ってきていることも閉鎖の理由。区によると一七年度は約一万六千六百人だったが、一八〜二〇年度は一万一千〜一万二千人台で推移している。

 山崎孝明区長は一日の定例会見で「区には運河や東京湾もある。残念ではあるが、そうしたほかの釣り場を探していただきたい」と理解を求めた。

釣り愛好家でにぎわう砂町魚釣場

釣り愛好家でにぎわう砂町魚釣場

 ある晴れた平日のお昼前、砂町魚釣場を訪れると、三十人近い愛好家でにぎわっていた。「年金暮らしの人も気軽に来られるのが良い。半分の広さで良いから残してくれないかな」。こう話すのは同区亀戸の安達潔さん(92)。関口勝児さん(73)=同区南砂=は「有料の釣り堀に行けば一回で二千円ほどかかる。ここがなくなると困るよ」とぼやいた。

 砂町から西へ二キロの豊住魚釣場では、星野勝さん(79)=同区東陽=が次々とヘラブナを釣り上げていた。「魚を釣り上げるときの緊張感はぼけ防止にもなっているよ」。三十年以上通っているという沢谷憲太郎さん(80)=同区東陽=は「高齢者が楽しみにしている場所だから、なくしてほしくないね」と寂しげだった。

 区は、砂町の跡地を区民農園として整備する予定だ。近くの城東区民農園の応募倍率は約六倍と人気が高いという。豊住の跡地をどうするかは未定という。

 文と写真・三宅千智

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